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マーケティングは、なぜこんなに面白いのか

「マーケティングって、要するに売る仕事でしょ?」
よく言われますし、ひと言でいえば間違いではありません。でも私は、その「売る」という言葉の中に、もっと奥深くて、もっと人の役に立つ仕事が詰まっていると考えています。ここでは、私がマーケティングをどう考え、KeyMediaでどこを目指しているのかをお話しします。

CHAPTER 01

最高傑作の折りたたみ傘 vs チープな折りたたみ傘。売れたのはどっち?

最高傑作の
折りたたみ傘

大きい・頑丈・上質

チープな
折りたたみ傘

小さい・安価な材料

まず、二人の傘職人を思い浮かべてください。

一人目の職人は、自分の腕に自信があります。大きくて雨にまったく濡れず、強風でも折れない骨組み。生地にもデザインにもこだわった、自分にとっての最高傑作の折りたたみ傘をつくりました。そして店頭では、生地の質やデザインの美しさを熱心に語ります。

二人目の職人は、まずお客さんに話を聞きました。すると、折りたたみ傘を買う人の多くは「カバンに入れっぱなしにしたい」「軽くて邪魔にならないのがいい」と思っていることがわかりました。そこで、小さくて軽い折りたたみ傘をつくりました。一人目の職人の折りたたみ傘と並べると、正直ちょっとチープな折りたたみ傘です。そして、「カバンに入れても重さを感じません」と伝えました。

売れたのは、二人目の職人がつくったチープな折りたたみ傘のほうでした。

一人目の職人の折りたたみ傘は、決して悪い商品ではありません。むしろ技術も情熱も詰まっています。でも、折りたたみ傘に「軽さ」を求めている人にとっては、その大きさも頑丈さも「いらない機能」でしかなかったのです。

CHAPTER 02

二人の傘職人、差がついたのはどこか

二人の差は、腕の良さではありません。相手をどれだけ理解していたか、です。

一人目の職人も、お客さんが「折りたたみ傘が欲しい」と思っていることは知っていました。でも、その言葉の奥にある本音までは見ていませんでした。二人目の職人は、その奥まで見にいきました。「ひどい雨を完璧にしのげなくてもいい。それより、毎日持ち歩くのが苦にならないことのほうが大事」という本音です。

違いは、つくった折りたたみ傘だけではありません。伝え方もそうです。一人目の職人は、生地やデザインといった「自分が自慢したいこと」を語りました。二人目の職人は、「カバンに入れても重さを感じない」という「相手がうれしいこと」を語りました。同じ折りたたみ傘の説明でも、どちらの目線で話すかによって、相手に届くかどうかがまったく変わります。

「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」という有名な言葉があります。折りたたみ傘も同じです。折りたたみ傘を買う人が欲しいのは、立派な折りたたみ傘そのものではなく、「急な雨でも困らず、ふだんは身軽に出かけられる毎日」なのです。

CHAPTER 03

マーケティングとは、究極の消費者理解

人は、自分が本当に欲しいものを、うまく言葉にできないことがよくあります。だからマーケティングでは、相手を表面的に知るだけでは足りません。どんなことで毎日困っているのか。どんな瞬間に心が動くのか。何があれば「これだ」と思えるのか。まるでその人本人になったかのように考えられるところまで理解する。私はこれを「憑依する」と呼ぶくらい大事にしています。マーケティングとは、つきつめれば「究極の消費者理解」だと私は考えています。

自分がつくりたいもの、好きなものから始める考え方を「プロダクトアウト」、相手が求めているものから始める考え方を「マーケットイン」と呼びます。一人目の職人はプロダクトアウト、二人目の職人はマーケットインです。マーケティングを知らないと、どうしても一人目の職人のようになりがちです。どれだけ愛情を注いでつくった商品でも、それを必要とする人に出会えなければ、誰の役にも立たないまま消えていってしまう。これは、とても悲しいことです。だから私は、愛情を注ぐ先を「商品」ではなく「使う人」に向けたいと考えています。

そして、相手を理解した結果として商品が売れることは、少しも押しつけがましいことではありません。売れたということは、それを必要としている人がいたということ。その商品で困りごとが解決したり、毎日が少し良くなったりした人がいるということです。つまり売上とは、「どれだけ多くの人の役に立てたか」を表す数字でもあります。だから私は、売ることを誇りに思える仕事だと考えています。

CHAPTER 04

売れないから安くするは、愚策

日本では、「原価ぎりぎりの良心価格」や「安く提供すること」が美徳とされることがよくあります。その気持ちはよくわかります。でも、それが必ずしも誰かを幸せにするとは限りません。

利益が出なければ、働く人の給料は上がりません。もっと良い設備を入れれば商品が良くなるとわかっていても、そのお金がありません。新しい商品を開発する余力も、挑戦する余裕も生まれません。結果として、商品も会社も、そこで働く人も、少しずつ疲れていってしまいます。

マーケティングの力があると、この流れが変わります。商品の本当の価値を、それを必要としている人にきちんと伝えられれば、安さだけで勝負しなくても選ばれるようになるからです。適正な利益が出れば、働く人の給料が上がり、商品をもっと良くするための投資ができ、新しい商品にも挑戦できる。その結果、使う人にはさらに良いものが届きます。

マーケティングは、事業を前に進めるエンジンです。そして、そのエンジンが力強く回るほど、世の中は少しずつ豊かになっていく。私はそう信じています。

CHAPTER 05

大きくて重い折りたたみ傘を、あなたならどう売る?

変えるのは、商品よりも届け方
01同じ折りたたみ傘

大きくて重い折りたたみ傘

02誰に・どう伝えるか

必要な人を見つけ、
その人に響く言葉で

03売れ方が変わる

「自分のための一本」
として選ばれる

KeyMediaのいまの仕事は、ほかの会社の商品を、広告を使って売ることです。

自分たちでつくった商品ではないので、商品の中身や値段を変えることはできません。折りたたみ傘の話でいえば、「大きくて重い折りたたみ傘」を売ることになる場合もある、ということです。

でも、ここからがマーケティングの本当の腕の見せどころです。大きくて重い折りたたみ傘も、ある人にとっては最高の一本になります。たとえば、車での移動が多く、台風の日でも絶対に壊れない折りたたみ傘が欲しい人。大事な商談の前に、スーツを一滴も濡らしたくない人。そういう人を見つけ出し、その人に響く言葉で価値を伝えられれば、同じ折りたたみ傘がちゃんと売れていきます。

どんな商品にも、それがいちばんの答えになる人がいる。その人は誰なのか、どこにいるのか、どんな言葉なら振り向いてくれるのか。商品を変えられないからこそ、動かせるのは自分のマーケティング力だけです。だから本気で考え抜きますし、その経験が、他では身につかない力になります。制約は、マーケターを鍛えるいちばんの先生です。

しかも今のマーケティングは、想像だけでは終わりません。考えた言葉を広告にして世に出せば、どれだけの人が反応したかが、その日のうちに数字で返ってきます。数字は、届けた相手の心の声です。仮説を立て、届けて、答え合わせをして、また考える。この繰り返しで、人を理解する力は確実に鍛えられていきます。

そして、成果を出したときの手応えは本当に大きいものです。マーケティングは事業の中心にあるので、成果が上がれば、その商品を持つ会社の事業そのものが加速します。「おかげで事業が伸びた」と喜んでもらえる瞬間もあります。ほかの会社の商品を売る仕事は、その会社の未来を一緒に背負う仕事です。何かの準備期間や通過点ではなく、それ自体が誇れる、価値の高い仕事だと私は考えています。

CHAPTER 06

KeyMediaが目指す、最終ゴール

マーケティングが回す、豊かさの循環
良いものが売れる利益が戻るもっと良いものが生まれるマーケティング

KeyMediaが目指す最終ゴールのひとつは、自分たちの手で商品やサービスをつくることです。

マーケティングの力は、売るときだけに使うものではありません。世の中で本当に困っている人は誰か、業界にどんな課題があるのか。そこから出発して商品をつくれば、最初から「必要としている人がいる商品」が生まれます。売るために磨いた力は、そのまま、つくる力になるのです。

その「人を理解する力」は、実際に商品を売る現場でこそ磨かれます。毎日、人の本音を想像し、言葉にして届け、数字で答え合わせをしてきた人だからこそ、思い込みではなく、本当に求められる商品をつくれる。私が「いきなり商品づくりから始めるより、まず売る現場で人を理解する力を磨いてほしい」と考えるのは、そのためです。

売る現場で磨いた力で、一人目の傘職人ではなく、二人目の傘職人として、世の中に本当に必要とされる商品をつくる。それが、私がKeyMediaで目指している場所です。

CHAPTER 07

ここまで読んで、「自分もやってみたい」と思ったあなたへ

マーケティングで身につく「人を深く理解する力」は、業界や時代が変わっても色あせません。

KeyMediaでは、AIを毎日とことん使っています。広告の文章づくりも、数字の分析も、AIに任せられることはどんどん任せています。それでも、「この商品を、誰に、何と言って届けるか」を決める部分だけは、AIでは代わりがききません。大きくて重い折りたたみ傘を身軽さを求める人に売ろうとすれば、どれだけ上手な文章でも売れないからです。AIを使いこなすほど、最後に差がつくのは人を理解する力だと、私は実感しています。

人の気持ちに興味がある人。「なぜこの人はこう感じるんだろう」と考えるのが好きな人。自分が関わったもので、誰かの毎日を少し良くしたい人。そういう人にとって、マーケティングはこれ以上ないほど面白く、奥深い仕事です。

人を理解し、必要な人に必要なものを届け、事業を動かし、そして自分たちの手で、世の中に必要とされる商品をつくる。その道のりを、KeyMediaで一緒に歩んでいきませんか。

株式会社KeyMedia 代表取締役 細川 太廊